私は大学時代1年間、韓国に交換留学をしていました。
留学自体は随分と前になりますが、日常生活でティッシュペーパーを買うたびにあの頃のことを鮮明に思い出します。
【ティッシュも買えない】
留学初日、金浦空港に到着し、予め英語と日本語が堪能な韓国人の友人に教えてもらっていたバスに乗り込み、留学中に滞在する予定のコシウォン近くのバス停で降りました。
そこにはその友人が待っていて、地図を見ながらコシウォンへ到着。
大家さんへの挨拶や基本的な買い物などは友人が代わりにやってくれて、無事1日目が終了。
当然、友人は自分の家へ帰っていきました。
そこで気づいたのは、ティッシュがない…ということ。
ないと生きていけないわけではないけれども、なんとなく不安になり、一人コンビニへ行きました。
そして、困りました…ティッシュがどこにあるかわからない…でも韓国語でティッシュがわからない…。
試しにティッシュと言ってみるものの、お店のおじさんには伝わらず、そしてネット環境も整っていなかったのでサクッとスマホで検索するなどということもできなければ、コンビニまで行くのにわざわざ辞書など持っていない…その場では半べそをかきながらジェスチャーも交えてなんとかティッシュを買うことができました。
実は留学前から一応韓国語の授業は受けていたのですが、正直あまりやる気がなく、ハングルの読み書きができて簡単な受け答えができる程度のレベルで突然単身韓国で一人暮らしをしようとしていたのです。
この時、ティッシュで鼻をかむ自分の姿を想像しながら、これまで自分がまじめに勉強してこなかったことを激しく後悔しました。
【言葉を命綱に】
そんな苦い韓国留学1日目を経験した私は、当然留学先の韓国語の授業でも、ほぼ最下位レベルでした。
そのとき同じくらいのレベルの生徒の中には、日本人がおらず、ドイツ人やマレーシア人など、これから韓国語の勉強を軽くしていこうという人たちばかり。
日本人の中で所謂ドベ。正直心が折れました。
不真面目なくせにプライドの高い私は、最初のうちは本当に楽しくなく、早く日本に帰りたいという気持ちでいっぱいでした。
でも、投げ出したいと思ったときにいつも思い浮かべるのは、涙を浮かべながらティッシュを買おうとする自分の姿。
この国では、韓国語をしっかり学んでコミュニケーションが取れないと、ティッシュすら買えないのだ、楽しくないどころではない、きっとどこかでのたれ死んでしまう。
大げさかもしれませんが、当時は本当にそう思いました。
そして、私の目標はここで暫く生きるために韓国語を習得すること、韓国語を1年後元気に帰国するその時までの命綱にしようと決めたのです。
その後、私の韓国語のレベルは、トップクラスレベルにはならずとも、すぐに日常生活を送るのに支障がない程度になり、済州島への旅行、現地の人たちとバンドを組んでライブをしたり、英語力を落とさないために英会話スクールに自分で契約しに行き通ったり、大好きなミュージカルの観劇をしたり、ただ朝起きて夜寝るまでをなんとか生きるだけではなく、元の自分の趣味も楽しめるようになりました。
ちなみに、今、実はコスプレを少ししていますが、そのコスプレを始めたのは、他でもない韓国留学中です。
その国の言葉が使えるようになっただけで、新しいことが始められるほどのエネルギーをつけることができました。
当然のことではありますが、言葉を使ったコミュニケーションは人間として今の社会で生きていくために必ず必要な栄養素のひとつなのだと、肌で感じることができた1年間でした。
おそらく留学だけではなく旅行もおなじで、外国に訪れるときは、ちゃんとその国の言葉を使うために少しでも勉強することが、滞在中の時間をより楽しく充実したものにするために必要なことなのだと思います。